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弁護士紹介

高木 秀治


事例の目次

建築紛争の事例解説6

10年間雨漏り事件
事件受任に至るまで

本件は、新築請負契約により建設された、地下1階鉄筋コンクリート造、地上2階木造の住宅で、地下1階外壁部分から雨漏りが発生した事案です。本件建物は引渡しから数ヶ月後に雨漏りが発生し、施工を行った工務店が何度か防水工事を行いましたが、破壊調査等の本格調査を行わなかったので、雨水の浸入経路を特定できないまま時間だけが経過し、終には10年間の瑕疵担保期間が経過する寸前となってしまいました。

そこで、建物所有者は、私以外の代理人弁護士に依頼して、工務店を相手方として東京都建設工事紛争審査会に調停を申し立てました。

しかし、当初の代理人弁護士でも雨水の浸入経路を特定できず、結局、調停は不成立となりました。

私は、調停不成立となる直前に建物所有者から相談を受け、当初の代理人弁護士と交代する形で訴訟事件として受任しました。

訴訟の流れ

訴訟を提起するにあたり、いくつか難題がありました。

まず、消滅時効の問題です。建設工事紛争審査会の調停申立により時効は中断していましたが、調停不成立により手続が打ち切られた場合、その打切通知を受けた日から1か月以内に訴訟提起しなければ、時効中断の効力が失われてしまいます。言い換えれば、その短期間で、建物調査を行って雨水の浸入経路を特定し、訴状を作成して訴訟を提起しなければならなかったのです。幸いなことに、協力建築士の迅速な働きにより、破壊調査を行って、短期間で雨水の浸入経路を特定する目処が立ちました。

次に、工務店の資力の問題です。私が調査を行ったところ、すでに工務店は事実上廃業していました。間々あることですが、責任を追及する相手が廃業してしまった場合、強制執行ができませんので、たとえ勝訴判決を獲得できたとしても、同判決は紙切れ同然の価値となってしまいます(本件は住宅瑕疵担保履行確保法の施行前でしたので、同法の適用がありませんでした。)。そこで、工務店と共に代表者の個人責任を追及する訴訟を提起しました。

瑕疵は様々主張しましたが、主たる争点は10年間継続する雨漏りの解決方法でした。当方は金銭解決を望みましたが、案の定、工務店には資力がなく、補修による解決しか選択の余地がありませんでした。

雨漏りの補修で難しいのは、特定したはずの雨水の浸入経路を補修しても、他に浸入経路があれば、雨漏りを完全に止めることができないことです。そこで、和解協議では、完全に雨漏りが止まるまで補修を行うことを条件としました。具体的には、裁判係属中に防水工事を行うこととし、近年頻発する台風やゲリラ豪雨によっても漏水がないことを確認した上で、最終的に和解を成立させることができました。

訴訟提起から和解成立までの期間は約1年11か月でした(補修やその後の経過観察の期間も含みます。)。

コメント

瑕疵を考えるとき、「欠陥現象」と「欠陥原因」を意識しましょう。本件で言えば、「欠陥現象」は建物内に雨が漏ること、「欠陥原因」は雨漏りの浸入経路です。法律上の「瑕疵」は「欠陥原因」を指します。「欠陥原因」を是正しなければ、言い換えれば、雨水の浸入経路を是正補修しなければ、瑕疵はなくなくなりません。したがって、欠陥住宅問題を解決するにあたり、「欠陥原因」の特定は必要不可欠です。

ところが、「欠陥原因」の特定のための調査やその是正工事に多くの費用がかかる場合、往々にして業者は、仕上等の表面的な部分だけを補修して、「欠陥現象」の雨漏りが止まったかのように見せかけて誤魔化すことがあります。

こうなると、外見上は是正されたように見えます。しかし、雨水の浸入経路という「欠陥原因」はなくなっていないので、いずれ再び雨漏りという「欠陥現象」が発生します。このようなことを繰り返している間に、瑕疵担保責任の時効期間が経過してしまうことが少なくありません。

繰り返しますが、欠陥住宅問題の解決には『欠陥原因』の特定が必要不可欠です。

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