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弁護士紹介

高木 秀治


事例の目次

建築紛争の事例解説10

裁判と建築行政の合わせ技で解決した事件
事件受任に至るまで

本件は、戸建て住宅の請負契約において、工事中に様々な不具合が発生し、完了検査の直前で、施主と施工業者との間で信頼関係が完全に失われて、施工業者が請負代金請求訴訟を提起し、施主が不具合について瑕疵担保責任に基づく修補を請求し、かつ、引渡しの遅滞による違約金を請求した事件です。

私が相談を受けたときにはすでに別の弁護士が付いていて、訴訟提起から3年以上が経過し、請負代金と瑕疵について裁判所の心証開示がなされていました。 ところがここで大きな問題があり、長い年月の経過により、裁判所と各弁護士との間では、引渡しの遅滞による違約金請求の争点が完全に忘れ去られていたのです。

この間、施主はずっと仮住まい生活をしていて、さらには住宅ローンの支払いも始まっていて、住居にかかる費用が二倍も発生している状態でしたので、改めて違約金の請求を弁護士に要望したところ、難しいと告げられて、最終的には代理人を辞任されてしまいました。

こうして施主は非常に困ってしまい、私が途中から事件を受任することになりました。

訴訟の流れ

私が事件を受任した際、最も重視したのはスピードです。すでに訴訟提起から3年以上が経過し、その間、建物は放置され、仮住まい費用などの損害がどんどん膨らんでいる状態でしたので、迅速に事件を解決する必要がありました。そこで、原則として引渡しの遅滞による違約金請求という争点に絞って主張することを条件に受任しました。

当初、高い約定利率による違約金を請求していましたが、施工業者が家賃や駐車場代などの実損害であれば支払いに応じる姿勢を見せたので、実損害の賠償と修補を求める和解で解決することを目指しました。

修補を求めるにあたり、大きな問題となったのは完了検査を受けていないことでした。裁判所が認定した瑕疵には、複数の防火基準違反があり、これは完了検査の対象となるものでした。そして、裁判上の和解により修補させたとしても、完了検査では別の防火基準違反が指摘されるなどして、この紛争が解決できなくなるおそれがありました。

そこで、極めて異例な手段ではありましたが、和解の条件として、裁判所が特定行政庁の窓口に対し、補修案が建築基準法に適合していることの確認を求める旨の調査嘱託を行うことを申立てました。本来の調査嘱託のやり方ではありませんが、本件紛争を適切に解決するには必要であると裁判所を説得し、裁判所もこれに応じてくれました。裁判所と建築行政の合わせ技で法適合を達成するというスキームです。

ところが、ここからが大変でした。補修案の設計図書を特定行政庁の窓口に提出したところ、案の定、不備があると何度も指摘されたのです。施工業者の担当建築士の技量不足が原因でした。ファイヤーストップ材がない、耐火被覆がない、遮煙性能があることを図面で確認できない、図面が不足している、図面に不整合がある等々、きりがありませんでした。そして、最終的に建築基準法に適合しているとの回答が得られたのは、最初に不備を指摘されたときから、なんと丸2年が経過していました。

訴訟提起から私が参加するまで約3年2か月、私が参加してから和解案の骨子をまとめるまで約8か月、調査嘱託開始から和解成立まで約2年2か月かかりました。

コメント

建築士の技量不足の場合、建築基準法に適合させる家づくりは至難の業となります。ところが残念なことに、防火基準について、建築士の技量不足のケースは珍しくありません。告示を正確に理解していなかったり、図面に書き忘れていたりと様々ですが、本件は、そもそも告示を知らなかったり、そもそも防火基準を満たした図面の書き方を知らなかったりするなど、非常に深刻なケースでした。

この建築士の技量不足により、皆が振り回されて、施主は本当にお気の毒でしたが、施工業者の対応窓口の方や、裁判所、双方の代理人弁護士も多大な迷惑を被った事件でした。

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