■欠陥はたくさん指摘した方が良い?
欠陥は厳選しましょう
これは確信をもって言えることですが、欠陥の指摘は厳選しましょう。相談者の中には「欠陥をたくさん指摘した方が工事の悪質性が伝わる」と考える方がいらっしゃいますが、これは誤りです。例えば5個や10個はまだよいですが、100個や200個も指摘するのはNGです。さて何故でしょうか。
欠陥を指摘する場合、その1つ1つが欠陥であることを主張立証する必要があります。欠陥の重大性によって主張立証の程度に差があるわけではなく、比較的軽い欠陥であっても、しっかり主張立証しなければなりません。そのため、欠陥の重大性に関係なく、1つの欠陥を指摘するのに時間と労力がかかります。そして、裁判官も1つの欠陥を理解するのに時間と労力をかけています。
ところが、裁判官は多数の事件を抱えていて、1つの事件にかけられる時間と労力は有限です。例えば、補修費が500万円の欠陥が1個、補修費が5000円の欠陥がたくさんあるとします。裁判官としては、欠陥として指摘される以上、全てに目を通さなければなりません。そうなると、補修費が5000円の欠陥がたくさんあればあるほど、補修費が500万円の欠陥に掛けられる裁判官の時間と労力は減っていきます。
また、欠陥を指摘する以上、建築士が作成する調査報告書に記載してもらう必要があります。この調査報告書の作成費用は、通常タイムチャージです。そうなると、例えば細かい傷を10個、20個指摘してもらったとして、それらをまとめてリペア業者に補修してもらえば合計5万円で修繕できる場合、調査報告書の作成費用の方が高く付く場合があります。費用対効果が合いません。
欠陥を厳選する方法
欠陥を厳選する方法は、まずは補修費の金額で考えましょう。金額が高いものから優先順位を振りましょう。欠陥の数が多くなる場合、リペア工事で補修できるものは外しましょう。
次に、立証できる見通しで考えましょう。いくら補修金額が高くても、欠陥として立証できる可能性が低ければ、優先順位を低くした方がよいでしょう。そうしなければ、結果的に金額が高い請求部分だけ認められず、弁護士や建築士の費用、裁判費用だけ支払って補修費がほとんど残らないという事態になりかねません。ただし、見通しについては弁護士であっても確実に判断できる人はいません。どんな事件でも敗訴のリスクはあります。そのため「明らかに」立証できる可能性が低い欠陥は、優先順位を低くすると考えた方がよいでしょう。