躯体の問題か
建物の部材にひび割れ、傾き、膨れなどの不具合が多数確認される場合、構造的に危険ではないかと心配されることが多く、尤もなことかと思います。構造的に危険かどうかは技術者が判断する必要があり、弁護士には分かりません。ですが、技術者が判断するために確認すべき情報はありますので、その点について説明したいと思います。
建物の構造上の安全性は、建物に作用する様々な荷重に対して、建物が必要な構造耐力を有しているかにより判断されます。様々な荷重とは、垂直方向の荷重(建物の自重、積載荷重、積雪荷重等)や、水平方向の荷重(地震力、風圧力等)です。これらの荷重を支えるのは、建物の骨組み部分です。建築用語でいえば「躯体」、法律用語でいえば「構造耐力上主要な部分」です。
問題となっている不具合が、躯体部分にあるのか、それ以外の部分にあるのか、確認することがまずは重要です。
建物の構造の把握が必要です
建物の躯体部分がどこかに当たるかは、建物の構造によって異なりますので、不具合が建物の躯体部分にあるかどうかを知るには、まずは建物の構造が何かを把握する必要があります。木造であれば、軸組工法(在来工法)、枠組壁工法(ツーバイフォー等)、鉄骨造であれば、ブレース構造、ラーメン構造、鉄筋コンクリート造であれば、ラーメン構造、壁式構造などです。この情報がなければ技術者は判断が困難ですので、最低限の情報として把握しておきましょう。
それぞれの構造について簡単に解説します。まず、日本人に馴染み深いが軸組工法(在来工法)は、垂直方向(鉛直方向)の荷重(自重、積載荷重等)を梁と柱で支えます。しかし、これだけでは水平方向の荷重(地震、台風等)には十分に抵抗できず、容易に倒れてしまいます。そこで、柱と梁の間に斜めの突っ支い棒を設置することで、横方向の荷重にも抵抗できるようになります。この斜めの構造材を筋交いといい、このような水平方向の荷重に抵抗する構造体を総称して耐力壁といいます。

耐力壁の種類には、筋交いが1本の方筋交いの他に、2本のたすき掛筋交い、構造用合板などがあります。

これに対し、木造の枠組壁工法(ツーバイフォー等)は、床や壁などで構成されます。軸組工法が線(軸組)で構成されるのに対し、枠組壁工法は面で構成されるイメージです。ツーバイフォーとは、まず2インチ掛ける4インチの角材で四角の枠を作り、この枠に構造用合板を打ち付けて面材を作り、この面材によって建物を作る工法となります。
次に鉄筋コンクリート造のラーメン構造を解説します。「ラーメン」とは、ドイツ語でフレームを意味する言葉で、柱と梁で構成されます。木造の軸組構造と似ていますが、異なる点としては、柱と梁の接合部がしっかり固定されていますので、柱と梁だけで水平方向の荷重にも抵抗できるということです。しかし、地震が多い日本では、耐震基準が高く設定されているため、実際に構造計算をした場合、地震力等の水平方向の荷重に抵抗するには柱と梁だけでは足りず、耐力壁も必要となることが多いです。
鉄筋コンクリート造の壁式構造は、木造の枠組壁工法のように、床や壁などの面材で構成されています。柱と梁がなく、面材が構造体となるので、見た目はすっきりしますが、大きな開口部を設けると構造耐力が低下するという共通の弱点があります。
次に鉄骨造のラーメン構造を解説します。これは鉄筋コンクリート造と同じで、柱と梁によって構成され、これだけで水平方向の荷重にも抵抗できます。
鉄骨造のブレース構造は、木造の軸組構造と同じく柱と梁とブレース(斜材)によって構成され、このブレースが水平方向の荷重に抵抗します。
建物の構造が異なることによって防水の工法も変わるので、建物の構造はとても重要な基本情報となります。
参考となる資料は仕様書、構造図、構造計算書
技術者が建物の構造を把握するには設計図書が必要です。設計図書とは、仕様書と設計図をいいます。この設計図書には、意匠図、設備図、構造図などいくつか種類があり、中でも構造に関する設計図書が重要です。具体的には、特記仕様書、標準仕様書、軸組図、伏図(基礎伏図、床伏図、梁伏図、小屋伏図等)、各部材リスト、矩計図、断面詳細図、構造計算書などが参考になります。
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