建築トラブル・欠陥住宅Q&A|東京都中央区日本橋 プラス法律事務所
建築トラブル・欠陥住宅Q&Aを解説する弁護士 高木秀治|東京都中央区日本橋 プラス法律事務所

床の傾斜の測定方法はどうするの?

傾斜の程度は角度で主張するの?1000分の6って何?

傾斜の程度を言い表す方法として、一般の方は最初に角度を思い浮かべるかもしれません。

しかし、建築の分野では、床の傾斜は1000分の3や1000分の6などの表現を使います。これは水平方向1m(1000mm)あたり3mmや6mmの高低差があることを言い表しています。つまり、1000分の3であれば1mあたり3mmの高低差が、1000分の6であれば1mあたり6mmの高低差があることになります。これを角度で言い表すと、1000分の3が約0.17度、1000分の6が約0.34度となります。床の傾斜を角度で言い表すと分かりにくいので、裁判ではあまり用いられません。

傾斜の測定方法は?

主な床の傾斜の測定方法として、2点間の高低差を測定するレーザー墨出し器による測定と、1点の傾斜を測定する水準器による測定の2種類があります。

レーザー墨出し器とは、一定の高さのレーザーを飛ばす機器です。

レーザー墨出し器

レーザー墨出し器による測定は、基準となる場所にレーザー墨出し器を設置して、基準点のレーザーの高さと、測定したい場所のレーザーの高さを計測し、2点間の高低差を算出します。

レーザー墨出し器による測定

水準器による測定は、測定したい場所に水準器を設置して測定します。一般のデジタル水準器であれば、角度や1000分の○などがデジタル表示されます。

デジタル水準器

どちらかの測定方法が優れているというものではなく、事案に応じて測定方法を考える必要があります。

傾斜の基準は?

品確法に基づく「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」では、床の傾斜について、「3/1000未満」は構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が「低い」、「3/1000以上6/1000未満」は「一定程度存する」、「6/1000以上」は「高い」と定められています。但し、測定方法は、凹凸の少ない仕上げによる床の表面で、3m程度以上離れている2点間の角度を測定することが定められています。そのため、2点間の高低差を測定できるレーザー墨出し器によって測定することが一般的です。

国土交通省「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」

また、日本建築学会では、「液状化被害の基礎知識」の「建物の傾きによる健康障害」として、床の傾斜角と健康障害の関係について研究結果が公表されています。床の傾斜角が「1000分の6」の場合は健康障害として「不同沈下を意識する」、「100分の1程度」(1000分の10)の場合は「めまいや頭痛が生じて水平復元工事を行わざるを得ない」とされています。

日本建築学会「建物の傾きによる健康障害」


測定方法はどのように使い分ければいいの?

不同沈下で建物全体が傾いている場合や、構造上の欠陥で床全体が撓んでいる場合など、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が疑われる場合、品確法に基づく「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」に基づいて、レーザー墨出し器によって測定した方がよいでしょう。

これに対し、床の下地や床材の貼り方の問題で床がデコボコしている場合、これは局所的な傾斜になりますので、1点の傾斜を測定する水準器による測定か、2点間のレーザー墨出し器による測定の場合は900mmピッチなど短いスパンで測定する必要があります(傾斜の程度が酷い場合は、450mm程度までピッチを短くする必要があります)。

局所的な床のデコボコを計測する場合、何故短い距離で測定しなければならないかというと、2点間のレーザー墨出し器による測定の場合、その2点間の高さだけを測定するため、その間の傾斜は全て無視されるからです。極端な図で説明すると、床が大きく波打っていたとしても、2点間の高低差が0mmであれば、傾斜は無いという結果になってしまうのです。そのため、床のデコボコを正確に測定するには、2点間のピッチを短くして、詳細に測定する必要があるのです。

レーザー墨出し器の注意点

この測定方法のメリット・デメリットについては、専門的知見を有する建築士でも十分な理解がないことが多いので、注意が必要です。

床の傾斜は契約不適合(瑕疵)になる?

コラム「契約不適合・瑕疵とは何ですか?」で説明しているとおり、契約不適合(瑕疵)とは、欠陥現象ではなく、欠陥原因を指します。床の傾斜は欠陥現象であり、欠陥原因ではありません。床の傾斜の欠陥原因とは、例えば軟弱地盤や床下地の施工不良などです。

では、床の傾斜は契約不適合(瑕疵)に当たらないかと言えば、そんなことはありません。床の傾斜の程度が酷かったり、数が多い場合など、床の傾斜自体が瑕疵と認定されることもあります。

解決実績(事例)で「床の傾斜が瑕疵と認められた事件」を紹介していますので、是非ご覧ください。

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